オリンピックとナショナリズム

トリノオリンピックが閉幕しました。日本人が獲得したメダルの数がフィギュア女子の金メダルひとつだったことを受けて、日本選手団の団長がこんなことを言ってます。

 【トリノ来住哲司】トリノ冬季五輪日本選手団の遅塚研一団長(日本オリンピック委員会常務理事)と亀岡寛治総監督(日本スケート連盟理事)が26日、当地で総括会見を行った。「メダル5個」を目標に掲げながら、フィギュアスケート女子の荒川静香プリンスホテル)の金メダル一つに終わったことに対して、遅塚団長は「厳粛に受け止めなくてはならない。最低の結果といえる。日本の国民に謝罪を申し上げる」と話した。

http://torino.yahoo.co.jp/news?c=torino&a=20060226-00000056-mai-spo

この選手団長は五輪の大原則「参加することに意義がある」って言葉を忘れちゃったんでしょうか。オリンピックのような国際大会において、選手団長という立場から結果を重視したくなる気持ちもわからんではありませんが、さすがに「最低の結果だった」と言い切っちゃうのは頑張った選手に対して失礼ってもんでしょう。「成績不振については徹底分析しなくてはいけない。各競技団体には猛省を促したい」とか、ひとごとのように言っちゃうところもスゴイ。五輪も終わったばかり、もーちょっとマシなねぎらい方はできなかったのかと不思議で仕方ありません。


トリノ五輪に限った話じゃありませんが、マスコミはオリンピックにおける「国別対抗戦」としての側面ばかりを伝えてる気がします。いちおー日本のマスコミですから、日本人選手にスポットを当てて報道するのはアリだと思います。が、毎日毎日「国別メダル獲得数」ばかりを気にするのは流石にバカげているんじゃないかと。国別対抗戦を煽るヒマがあるんなら、もうちょっと他国のイイ選手も掘り下げて伝えてもらいたいものです。


オリンピックはサッカーのワールドカップなんかとは違って個人種目が多いです。こういう個人種目において、選手は「国の代表として戦う」というより「世界最高峰の大会で戦う」という意識のほうが強いんじゃないでしょうか。その人がどの国の代表か、なんて選手の肩書きのひとつにすぎないわけで。そーなると、今の国別対抗戦的な伝え方はあんま妥当じゃないんじゃない?と思うんですけどどーですかマスコミさん。


団体戦に関しても同様。今大会で「予想以上に奥深くて面白い」と好評だったカーリングでは、いわゆる「選抜チーム」ではなく国内の選考会に勝ったチーム(チーム青森)が代表になったそうです(うろ覚えなので確証はもてないですが)。カーリングではチームワークが重要となるってことも関係するんだと思いますが、やっぱり団体戦においても、「国別の選抜チームが国の代表として戦う」という側面よりも「あるチームが選考会を勝ち抜いて、その競技における最高の舞台(五輪)で戦う」というほうがドラマがあって面白いんじゃないかなぁ。まあ国別の選抜チーム同士の戦いってのも、ハイレベルなプレーを見れるという点では面白いんだけど。ともかく、今の五輪は(というか今のマスコミが伝える五輪の姿は)国別対抗戦という側面に偏りすぎてないですかね。


メダルに拘りすぎなところもありました。試合前から「メダル有力候補の○○選手に期待!」とか煽りまくって、結局惨敗なんてことも多かった。ウチの国には一体何人「メダル有力候補」がいるんだよ、と。メダルなんて出場選手中上位3名(チーム)ってだけで、いろいろある目標の一つじゃん。「メダルこそ全て」みたいなノリで、そこばっかりに注目しちゃうから、今回みたいにメダルがあまり取れなかったとき、上の団長みたく「最低な結果だった」とか思う人が出てきちゃうんですよ。物事の一面ばかりに集中せず「日本記録・個人記録を更新した」とか他の側面にも目を向けましょうよ。
もしくは変な脚色をほどこさず、事実をありのままに伝えることに終止して欲しいな。


ともかく個人的に今回のオリンピックはいろいろ新発見があってそこそこ楽しめました。マスコミが五輪をどう伝えようが、われわれが個々でそれぞれ好きなように楽しめればそれに越したことはないんでしょう。けど、如何せん情報源が限られてるからなぁ…。
次の五輪は、選手にとっても我々観戦する側にとってもよい大会であることを願っています。
マスコミの伝え方もより良いものになってますように…(まあ無理だろうな)。